著者:伊藤洋一 新潮新書 2016年2月20日 発行
『情報の強者』
現在、情報は多様化している インターネット、テレビ、ラジオ、新聞等々……。
しかし時間を割いているわりには本当に面白いニュースや有益な情報に出会うことが少なくなった。
本来、人間の生活を豊かにするはずの情報に振り回されている。
情報に振り回されないためには、いくつかの原則を持ち情報に向かうこと
・思い切って捨てること
・ループを作ること
思い切って捨てる 何を捨てるのか? どうやって捨てるのか?
まず、「どのようにして情報を得るか」
ループを作る 選んだ情報を有効に整理、活用するためには「捨てる」以外の視点が必要
1 情報の拾い方
【筆者のルーティーン】
各社が掴んだ特ダネを自社のネットに載せるのは午前三時 「薄目あけ」でチェックする
午前8時にNHKの「ワールドニュース」を見る
海外の情報に触れるには
NHKBS1「ワールドニュース」で何がニュースになっているか確認する。
日本で流通しているニュースは日本国内に極端に偏っている、
不必要な情報は拾わない いちばんよいタイミングで取り入れるように心がけている。
午前3時の各社の特ダネ
午前8時のワールドニュース
夕方以降のニュースは使い回し、焼き直しが多いのでほとんど見ない
人に会うことこそ情報である
人と会うからビジネスに直結する情報のほとんどは人間からだから
e.g. 同じ店に通い続ける、タクシーの運転手に話を聞く、街歩き(定点観測)
2 情報の読み方
新聞は遅いが侮れない
新聞 ~ 我々が情報源として最も慣れ親しんできたメディア 情報伝達の王様
テレビやラジオも新聞に頼っているニュースソース
ネット化が進んで紙の優位性はどんどん低くなっているが、全然読まないという選択はしない方がいい。情報の正確さでは、他のメディアより優位性がある。
新聞はニュースの配置を読む
「ニュースの目利き」がニュースをランク付けし、段数(記事の量)や位置を決めている。
何をトップに持ってくるのか
自分がすでに知っているニュースがどんな位置づけになっているか
自分の知らないニュースがそんな位置づけになっているか
配置を楽しむ
テレビとはなるべく付き合いを少なくする
映像の力はすさまじいが、1日に何度も同じ情報が流れる「使い回し」が多い
特に朝の情報番組は、意図的に繰り返している(起床時間や出勤時間がバラバラだから)
はっきり言って、ニュース番組は、午前と午後各30分見れば十分
日本は海外の事態を大げさに伝える
日本についての海外の反応を実態より大きく伝える傾向がある
そもそも日本人は、海外からどう思われているかととても気にしていて、過敏に反応しがち
日本の新聞は「内向き」である
日本人は新聞が好き 宅配制度、読み新聞が社会的階層で変わらないことも一因
国内市場がなまじ大きいために海外に発信する意識が低かった
マイナー言語という弱点もある
ネット情報におぼれるな
ネット情報は、テレビ同様「繰り返し」には注意した方がいい
情報のソースは一緒なのに、体裁を少し変えた程度の記事が無限に増殖している
多くの人が関心を持つほど拡散され、様々に形を変えて発表されていく
膨大さのわりに新しい情報は少ない
ネットの情報を制限するには、情報のソースに直接アクセスし、重複するニュースは避けるようにする
タイムラインは雑多で極私的
SNSのタイムラインは、情報そのものの価値によって選別されたものではない
タイムラインは「近さ」で選ばれたもので、非常に個人的な情報
娯楽として楽しむならいいが、いずれにせよ長時間見ないこと
快楽情報に溺れるな
人は知らず知らずのうちに自分にとって好ましい情報、都合の良い情報ばかりを摂取してしまう(=快楽情報)
メディア側も受けてのニーズを汲み、共感を呼びそうな情報ばかりを積極的に流す
世の中を知るためには不快情報も必要
3 情報のつなげ方
情報のループを作る
情報は、ただ収集するだけでは役に立てることができない。 集めた情報をリンクさせる必要がある
ループ ~ 「仮説」「ストーリー」「文脈」と言い換えられる
脳内に無数の常に更新し続けるループが存在し、立体的に交差しているという感じ
日頃からループを作ることを意識していれば、新しい情報が入力された場合、一定の見方を示すことができる
情報には前後関係がある
「風が吹けば桶屋がもうかる」 一見なんの関係もなさそうな事象が実は因果関係があるという意味
注目すべきは、バラバラの情報をつないで一つの結論を導き出している点
どんな出来事には必ず前後関係や因果関係がある。世の中は想像もしない形でつながり、相互に影響をし合っている。
ただし、ループが正しいかどうかについて、常に精査する必要はない。必要なのは情報からループを作るように脳を鍛えておくこと
既存の情報とのズレから書き換えを行う
新しい情報をループに入れると他の要素とのズレ・軋轢が生じることがある。そのズレはループに良い緊張感をもたらす
新しいものが入れば、古い情報はカレントなつながりの中では捨てられて「昔こういうことがあった」程度の扱いとなる
重要なのはあまり完成したループを作らないこと(そのループに入らない情報がおかしいとなってしまうから)
合致しない情報が入ってきても排除せずにループを更新・強化する癖をつけておく
知らないニュースを積極的に読む
自分とはまったく関係なさそうな情報を意識的に取り入れてみる
時には、新しいループを作ることにもつながる
専門的なニュースは、語源から確かめる
言葉の正確な意味を知っておく
e.g. STAP細胞 STAP細胞とはいかなるものなのか? iPS細胞とは何が違うのか?
4 情報の出し方
アウトプットが脳内を整理する
アウトプットするをするとそれに対して様々な反応がある。時には「こんな話もある」と新しい情報や見方をくれる人もいる
読者がループつくりを手伝ってくれる
情報は惜しまず放出する
自分が考えたアイディアをわざわざブログに書いて放出するなんてもったいないという意見があるが、これは完全に間違い
情報はただ頭に入れているだけでは使えるものにはならない
情報を整理し、固定化させるためには「わかっていない人」に教えるのがいちばん
アウトプットは情報を捨てること
140字等短い文章は、説明不足でトラブルを生じることもある
長めの文章には、「読んでもらえるタイトルや導入部分」「論理性」「情報や論理の取捨選択」が尚更必要
井戸端会議気分で発信はするな
一部には「ネットでは何を書いても良い。自由だから」と考える人がいるが、ネットがここまで普及してしまうとこの考えは危険
ネットの情報は永久不滅、なかったことにできない。ネットに残したものは、本人の意思とは関係なく永久に残る
「論理より言葉」に気を付け「流す勇気」を持つ
読み手は論理にはあまり反応しないが、「言葉」には非常に強く反応する。許せない言葉には思い当たるが許せない論理というのはあまりない
言葉が発火点になって、炎上することが多い
ネットは細切れに情報が伝わるから、その部分に触れた人の数は劇的に増える
所感:本書は、毎週金曜日に放送されている「Round Up World Now!」のパーソナリティである伊藤洋一氏の著書です。
「Round Up World Now!」を毎週楽しみに拝聴しているいちリスナーの私も、伊藤氏は常々どうやって情報を集めていらっしゃるのか気になっていました。
政治経済に関する情報を中心として、とにかく知識が広範に渡っていて、ご多忙な中でこれだけの情報を集めて精査するというのが並大抵なことではないことは理解していましたが、本書を読んで、なるほど経験に基づいてきちんとセオリーを確立されているのだなと得心がいきました。
内容が充実しすぎていて要約するのも大変だったのですが、どのように情報を得、それを整理し、活用するのか、あますところなく紹介してくれています。
ビジネスマンに是非お勧めしたい良書です。